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[コメント] ランナウェイ 逃亡者(2012/米)

ロバート・レッドフォードの監督作、出演はレッドフォードとシャイア・ラブーフということしか知らずに見始めたものだから、次々と現れる渋好みのキャストに吃驚&恵比須顔。「ブラヴォ!」と叫びたい衝動は何とか抑えても、ジュリー・クリスティまでも登場するに至ってはよだれを垂らし尽くしてしまう。
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**ネタバレ注意**
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レッドフォードの愛娘を演じた子役ジャッキー・エヴァンコさんは幼くしてすでに歌手として名を成している方らしいが、ちょいとクロエ・グレース・モレッツさん系の利発そうな可愛らしい少女で、駄菓子を買い与えたくなった瞬間が一度たりともなかったと云えば嘘になるだろう。しかし最も特筆すべきキャストはやはりシャイア・ラブーフだ。第一級の演技演出家レッドフォードはラブーフからキャリアベストの演技を引き出している。『欲望のバージニア』や『トランスフォーマー』シリーズも悪くなかったが、飄々としながらも凄腕で、なおかつ熱いプロフェッショナリズムも持ったこのラブーフは、キャラクタに含まれたユーモアの量が絶妙だ。アメリカ映画の醍醐味のひとつ「気の利いた台詞」を口にして実にサマになっているのがすばらしい。

物語展開の緊張感は逃亡を始めたレッドフォードが離れ離れの娘エヴァンコに電話をかける中盤あたりでピークを迎えてしまうが、リチャード・ジェンキンスやクリスティといったビッグキャストの投入や、ラブーフとブリット・マーリングによる枝ストーリーの充実化などによって弛緩は最小限に留まるよう図られている。このあたりの演出の腕はさすがに老練だ。

撮影については、レッドフォードは撮監に多くを委ねてあまり口出ししないのだろう。『リンカーン』に優るとも劣らない絵画的なキアロスクーロの屋内シーンを持った『声をかくす人』に較べれば随分オーソドクスな画面に終始しているが、物語の邪魔立てをしないという意味で善き平凡に徹している。それでもなおラストカットはやはり素敵だ。レッドフォードと娘が並木道の真ん中を歩く構図の収まり具合が実に心地よい。もちろんよくある構図なのだから何か当意即妙の映画でも引き合いに出したいところだが、実のところ真っ先に私の脳裏に浮かんだのは、(体の向きすら正反対だというのに、どういうわけか)ボブ・ディラン「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」ジャケットだった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] プロキオン14[*] Orpheus

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