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[コメント] バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014/米)

開幕のテロップの扱いやイカロスの暗喩から『気狂いピエロ』を意識している。ではどうするの、と見始めたが、アンナ・カリーナの代わりにエマ・ストーンがいる。つまりゲージュツだ映画だ高尚だ低俗だのの文系厨二の自己愛と懊悩を徹底的には嗤い飛ばしてくれず、最終的には寄り添って悲しんでおしまい。脱構築にもトレースにもならず、カビ臭い価値観だ。ゴダールとタランティーノに蜂の巣にされるべき映画だと思う。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「観客が求めるのは血とアクションだ」というカラス男のセリフが諧謔であっても本音であっても、いずれにしてもつまらない価値観である。前者なら観客全般をバカにしていることになるし、後者なら後者で、何を今更、それくらい自明のものとして理解した作家が「血とアクション」を通して「高尚」なものを作り上げていることへの無知をさらしていることになる。この監督が何と闘っているのか、理解に苦しむ。

ルベツキ先生のワンカット風撮影には恐れ入るが、状況と時間に包囲されて逃げ場がない感覚があるものの、見切れてくるとだから何やねん、となる。先生や俳優の技巧の無駄遣いだと思う。少なくとも、キュアロン先生のように良い使い方は出来ていない。

個人的に腹立たしいポイントがある。ラフマニノフとチャイコフスキーを主人公が演出する劇中劇の劇伴として使用し、終盤の飛翔シーンでも使用しているのだが(ラフマニノフ交響曲第2番二楽章、チャイコフスキー交響曲第5番二楽章)、ポピュラークラシックを、この監督は心のどこかでバカにしているのではないか。こういうアホが好きな音楽だ、と。キューブリックの例のように皮肉めいた使い方が効果をみせることがあるのは重々承知だが、テーマに即して考えても、単に演出の手管以前にバカにしているようにしか思えず、ファンからするととても不愉快だった。この監督と「低俗」と「高尚」の価値観が決定的に異なることに由来する感覚だろう。

(評価:★2)

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