[コメント] セッション(2014/米)
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ジャズ界では否定的な批評が出ているけれど、作品としてはセンスのある演出だ。随所で監督の上手さが伝わってくる。
まず夜のニューヨークの街並みでジャズの雰囲気を醸し出す。一旦部屋から出ていくフレッチャーが戻ってきたと思うと、「ジャケットを取りに戻っただけ」というセリフを言わせ、フレッチャーの侮れない性格表現をさりげなくしておく。デートのシーンで二人の靴のアップにより気持ちが通じ合うカットを挿入するなど。若い監督の今後に期待したい。
ただ、子弟のぶつかり合いはテクニックのみに焦点があてられ、チャーリー・パーカーの逸話などから、ジャズを貶める作品であると批判されているようだ。確かに、速さを追求するフレッチャーの指導方法には、違和感を覚えた。音楽とは、芸術とは、内なる渇きや欲求、湧き出る感情を表現するものだからだ。しかし、プロにとってそれらはテクニックがあってこそのものなのだ。そもそもフレッチャーがアンドリューを抜擢したのは、彼が「何か」を持っていると確信したからなのだ。「何か」を伸ばすにはテクニックありき、ということなのだろう。
アンドリューはフレッチャーを見返したい一心で練習に励む。音楽が好きだからではなくフレッチャーに対する憎悪のために。だがやがて訪れる挫折。
憎しみと悔しさを激しくドラムにぶつける長いソロの後、それはアンドリューの叫びとして徐々吐き出され、「何か」が開いていく。やがてはフレッチャーの心をも開かせた。
圧倒的な青春映画。
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