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[コメント] Mommy マミー(2014/カナダ)

誰にも感情移入できず冷めた目で観ていたのに、知らぬ間に涙がこぼれていた映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最初、不快なんですよ。社会の底辺の人種のゴチャゴチャとかどうでもいいわ。この母子、どっちも観ていてイライラするし。とか思って。 それがどっかでスイッチが入るんだ。どこで入ったか分からないくらい自然にスイッチが入ってしまう。知らぬ間に物語に飲み込まれている。

この感覚、個人的にはヴィスコンティ『家族の肖像』に似てたんです。最初は「不快」で、終わってみれば「すげーモン観せられた」って感覚。いや、話は全然違うんだけどね。

正方形の画面が、唯一横長フルスクリーンになるシーンがあります。そこで描かれるのは母親の妄想。未来予想図ではない。おそらく、果たされることがない願望。言わば、絶望の裏返しなのです。

その後(ほぼ映画終盤ですが)、彼女は「希望だ」と言います。息子を手放したのは、将来への希望(のための治療)だと言います。それは一見、横長フルスクリーンで描いた願望へつながる希望のようにも思えます。 でも私は、本当は違うんじゃないかと思うのです。 一人残された彼女の姿は、自分を偽り自分自身へ言い訳している苦悩の姿に見えるのです。彼女は息子を捨てたのです。 一方息子は、捨てられたことを薄々知りながら、この場を逃げ出し、おそらく母親の元へ戻ろうとするのでしょう。親子とは、解り合えているようで解り合えていない、解り合えていないようで解り合えている、そんな関係なのかもしれません。

痛い映画です。ヒリヒリするほど痛い。カラオケのシーンとか、ホームセンターのシーンとか、痛い痛い。 観ていて疲れる。

(15.05.02 恵比寿ガーデンシネマにて鑑賞)

(評価:★5)

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