是枝監督作品は結構好きで見てます。『歩いても歩いても』とか『海よりもまだ深く』とか、あの心地よいリアリズムが毎回優しい気持ちになれて好きなんですが、本作はイマイチでした。

キャスト陣はめちゃくちゃ豪華ですね。主演の４人はもちろんですが、お馴染み樹木希林とか大竹しのぶとかリリー・フランキーとか堤真一とか…脇を固める俳優陣まで実力派揃いなので、やはりこれだけの面々を集められるのは是枝さんだからこそなんでしょうが、でもなんかね。 原作があるようですが全く知りません。でも、元々主演４人の生活を中心に描いていく作品で、そんでもって超豪華で国民的女優が集められたもんだから、やはりそれを見せたい、売りにしたい、って思いが監督にあったんじゃないですかね。 いや、別にそれ自体悪いことじゃないし、むしろ別に真っ当なことだと思うんだけど、だからこそ日常生活のワンシーンとしては不自然に思うところとかクサすぎる言葉とかが多くて、要所要所で違和感を覚えるシーンがあったのも事実。 だから監督のあの日常を切り抜いて映画にスポッと当てはめたかのようなリアリズムを期待していた自分からすると、「え、何それ…」ってなっちゃったわけです。中途半端に監督らしさがあるのが私にはしっくり来なかっただけなんです。

まあ周りの人たちの死だとか別れの中でも固く結ばれた家族の絆というのは感じ取れたし、実際嫌悪をい抱いてもおかしくないはずの広瀬すずに対しての許しを与える関係には優しい気持ちになれる。それに下手に過去の人物や思い出を映すのではなく、今に残る梅だとか柱に刻まれた成長の証だとか口で語る思い出とか、そういう想像を上手く使ったことはよかった。 ただいつもみたいに気持ちのいいヒットを飛ばすような作品ではなくて、ぼてぼての内野安打って感じの作品に思えてしまったかな。