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[コメント] 弾丸大将(1960/日)

イロニー満載の米軍寄生噺。戯画と思って観ていたが、意外と本当の話かも知れず。米の各地の世界侵略先ってこんな側面もあるのだろうと思わされる。南弘が熱演過ぎて単調だが、それこそがイロニーかも知れず。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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不発弾収集が生業として成立しているのが奇怪な光景だった。この描写は沖縄の米軍映画でもしばしば登場するが、飯田蝶子さんが射殺される『劇映画 沖縄』ほか、あくまで違法行為扱いである。ところが本作では黙認されている。冨士の裾野と思しきロケ地には米軍演習に合わせて十数名の中年が待ち構え、終わると見るや我先に飛び出す。弾拾いは300人とも云われている。大物の不発弾はショベルで掘り出して大八車に載せられ、散弾の薬莢は拾われる。そして山小屋で花沢徳衛が待っていて、そこで収穫物は計量されて即金になる。片隅では娘さんが帳簿つけている。行きつけの呑み屋には米兵も客で来ている。

不発の善ちゃんと呼ばれる南弘は柔道など披露して米軍に取り入り、雇われて道案内や洗濯などして、米兵のオンナの世話もし、チンピラに絡まれると米兵に助けられている。後半の米軍退去に当たっては「せっかく占領したのに」と惜しがり「心の友」と慕う。米軍への寄生のイロニーが際立っている。弾拾いの誤射事件が続き、反対が起こって米軍は撤退。代わりにやって来た自衛隊は商売させてくれなくなり、南は弾泥棒になるのだった。南の造形が単線的で膨らみを欠いたのが残念だが、世の中そんなものかも知れない。

部落同士の対立がある。夫が弾拾いで弾に当たって死んだ未亡人のアワシマは個人的に『朝やけの詩』で有名になった開拓部落にいて、村の南がひでえ住まいだと見下すようなごく簡易な木造の建屋に住まわっている。農業では食えないので弾拾いを始める姿が哀れだ。再婚を勧められた開拓仲間の木村功に不発弾の分解を教えて貰う。?めを削ってネジ回す、駄目なら鋸。木村は誤爆で死んでしまい、やけになったアワシマは米兵と一緒になろう(彼から求婚に薬莢貰っている)と弾拾いして爆死。アワシマの無口な造形が際立っていた。原作は「不発弾」。

(評価:★4)

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