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[コメント] きみはいい子(2015/日)

一貫して家族関係の業やささやかな交歓を演ずる作品を発表してきた、呉美保監督の第4作。祝福とともに生まれながら、往々にしてトラブルの元になり大人たちを苛立たせる「子供」というものの集大成だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ただでさえ人間とともに暮らすことは煩わしく、苦痛の連続だ。大人ともなれば人格のひな形を持ちながら完成を見ない子供という異物との暮らしを強いられ、その苛立ちは最高潮に達する。その日々の感情を癒す簡単な方法を語るのがこの作品だが、一見安直に見える「抱きしめるという方法」はつい論理で考えがちな我々にとっては案外聴くべき真理を語っているようだ。一個の動物である人間のありかたを模索することで、理性を偏重する我々の生き方も変わるのかもしれない。こういう「知恵」には騙されてもかまわないし、むしろそれを阻む「恥ずかしさ」こそを棄てるべきだろう。

ありきたりではあっても、小学校をめぐるひとつの街、まわりのスロープと桜並木の景観は最後まで舞台をダイナミックに彩っている。ラスト近く、教師がダッシュしてからのすべての街に至る高まりは情動的で血の沸騰を促す名シーンとして機能した。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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