[コメント] 流れる(1956/日)
あっぱれ見事なり。これはもう、国宝でいい。
幸田文は、この原作で小説というフォーマットを極めた。つまり、それは小説でしか表現出来ない世界だ。成瀬は、主人公=梨花の造形の変更によって、映画というフォーマットの中でそのエッセンスを再構築する。
成瀬は、男を描くとどうにも一枚余計なものが挟まる感もあるが、女を描くことにかけては右に出るものが無い。その意味で、最高の原作と最高の女優陣を得て、これぞ最高傑作、というこの作品が生まれたことは、めでたい限り。
映画会社は、この奇妙なタイトルを嫌って変更しようとしたそうだが、とんでもない。それをピシャリと断ったという幸田文の硬骨がこの映画をも貫いたかのように、ともすれば行き過ぎる成瀬のウジウジ感に枠がハマり、スッと背筋の伸びた傑作になった。
何度でも観たい。
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