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[コメント] GONIN サーガ(2015/日)

しち面倒くさい桃太郎。あるいは“昭和ファンタジー”というSF。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







お話しの基本構成は、仲間を集めて鬼退治に出るという「桃太郎」型なんです。 だけど、犬猿雉を集めるクダリ、というか、その設定がしち面倒くさい。 「フリは小さくオチは大きく」という明石家さんまの言葉があるけど、この映画は真逆。 確かに重要なオチに繋がる設定ではあるんだけど、説明ばかりで気持ちが入らない(頭にも入らない)長いフリの割にオチが小さい。

GONIN』も嫌いじゃないし、安川午朗のテーマ曲が大好きでサントラを今でも時々聞いている私ですら、何の感慨も沸かないもの。 過去にすがって共感を求めていないで、今、この場のキャラクターに感情移入させてくださいよ。 (闘病中の根津甚八支援映画だって言われたらそれまでだけど)

なにも『GONIN』の設定を引き継がなくてもドラマは作れたと思うんです。むしろもっとシンプルにいいドラマが。いやもう、観客のほとんどは「知らん」「覚えてない」人たちじゃないのかなあ?てか、『GONIN 2』は設定無視して作ったじゃん。

石井隆の良さって、「70年代四畳半フォーク」的な精神性とバイオレンスの融合だったと思うんです。 バイオレンスって“ロック”なイメージなんだけど、石井隆は“ロック歌謡”。なんなら“ロックの皮をかぶった演歌”。X JAPAN的な感じ。あれ、ド演歌。 それを1990年代にやったことで(あ、ちょうどX JAPANの頃だ)、過激さの奥に垣間見える“人情話”にノスタルジー的な“近さ”があったように思うのです。

でも、もう21世紀だからねえ。“遠い”んですよ。 例えば花嫁。あそこで銃を手にはしないよ。普通、逃げますよ、あの場面。花嫁が銃を手に立ち上がることが“自然”と思えるほどの“感情”も描かれていないし。 じゃあどうして花嫁が銃を手に取るかというと、それは作り手の「昭和」的な「ファンタジー」の発想でしかないと思うのです。もはや昭和時代はSFなのです。

そうそう、昭和の頃って、銃も簡単に手に入ったし、重病人も難なく病院から抜け出せるし、工事現場の地下に潜り込んでても誰も気付かなかったよねえ・・・ってそんなワケあるかい!

(15.10.10 角川シネマ新宿にて鑑賞)

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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