[コメント] アクトレス 〜女たちの舞台〜(2014/仏=伊=スイス)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画の主要人物は「過去の栄光に囚われるベテラン女優ジュリエット・ビノシュ」、「若い献身的なアシスタントクリステン・スチュワート」、「さらに若くて怖いもの知らずのスタークロエ・グレース・モレッツ」の3人で、現実の世界でも彼らのイメージはこれにリンクしている。特にビノシュとクロエには違和感がないだろう。でも実はクロエが演じた破天荒な若手女優役は、初めはクリステンにオファーされたものだった。
クリステンは劇中の若手女優と同じく、大人に馬鹿にされがちなティーン向けの映画でブレイクし、恋愛沙汰のゴシップで世間を賑わせて常にパパラッチに追われるスターである。この役をそのまま彼女がやっていたらそれはそれで見ごたえがあったと思う。だけどその「現実では若手売れっ子女優」のクリステンが、映画の中で若手に脅かされるベテラン女優を支える裏方になり、さらに芝居の練習相手として若手女優の演じる役をするという何層にもなった構造で、それはそれはもう深読み大好きな(おまけにクリステン超好きな)私としてはヨダレが垂れそうな世界でした。
ビノシュ演じるベテラン女優はとにかくずっとグズグズしている。初めから終わりまで脅えている。若き日の自分自身に、当時演じた蠱惑的な女の役に、それを演じる若手女優に、そしてそれをすべて理解しながら、素直で柔軟な感性を持った若いアシスタントに。とにかくその若さが怖いのだ。
ビノシュとクリステンがやおら服を脱ぎ捨てて湖で泳ぐシーンがある。この時クリステンは下着をつけたままで(しかもブリーフみたいな色気のないパンツ)、ビノシュはすぱっと全て脱いだ。「はあ〜やっぱりハリウッドの若手女優は脱がない主義か。クリステン、女優魂見せて欲しかったなー」なんて思っていたんだけど、このあとTバックのおしりを丸出しにして寝ているクリステンをビノシュが見てしまうシーンがあるのだ。ここでドキッとさせるためのあえての下着、あえてのブリーフだったのか。この時のクリステンは彼氏と会って帰宅した直後。普段はブリーフなのにデートではTバック。普段はTシャツにズボンの部下が見せた女な姿、若くてピチピチのおしり。自分は大昔に弄ばれた大物俳優のことろ「サイアクな奴」と言いながら、自分のホテルの部屋番号の書いた紙を渡したり、それに反応がなくてイライラしたりするありさまなのに。
クリステンが自分を思ってこの仕事を薦めているのはわかっているけど割り切れず、台詞相手の彼女とその役柄をわけて考えることもできなくなって、ついに愛想をつかされ自分の元から去られてしまう。劇中劇のストーリーそのままに。
クロエ演じた若手女優もそうだ。最初はきちーんと清楚なワンピースを着て「あなたのファンでした。憧れの女優です。」と並べたててまんまと気に入られて、最後のシーンではその憧れの大先輩に対して「あんたの役なんかどうでもいいし誰も気にしてない」と言い放つ。(字幕では出てなかったけど口の利き方も最初とずいぶん違う)若い女を手玉に取ったつもりが最初から自分が手玉に取られていたのだ。
ただの女の争いを描いた映画じゃない。女優という生き物を何層にも重ねて女を描いている映画。世界で一番信用する映画レビューであるこのシネスケには女性が少ないのが悔しい。いろんな女性の感想が聞きたい映画です。(2016.7.1DVD)
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