コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ヘイトフル・エイト(2015/米)

2時間もの間続く1章〜4章の会話の数々は退屈に尽きる。これらの会話が退屈なのはそれが知的で論理的でもっともらしいがために人物の行動・暴力を抑制し続けているからである。この点は『ジャンゴ 繋がれざる者』にも見られた傾向をそのまま踏襲しており全く好きになれない。しかしそれだけに残りの5章&最終章は感動的だ。やはりクエンティン・タランティーノは文学や政治の人である前に紛れもない映画人なのだ。
Sigenoriyuki

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







5章はゾーイ・ベル他の役者陣の可愛らしさが目を引き、ここだけで映画を一本撮ってほしいとすら思えてくる。会話劇から虐殺への移行も『キル・ビル』や『イングロリアス・バスターズ』をさらに洗練させたかのような素晴らしさ。

ワイオミング州が舞台、雪景色、顔を傷つけられた女、小屋に隠れた人間を銃殺、止めを指す直前に弾が切れるなどクリント・イーストウッド許されざる者』を想起させるのはただの偶然か。

監督本人はジョン・カーペンター遊星からの物体X』から影響を受けた語っているようだし、実際音楽も流用されている。しかし美術設計などを見比べてみる限りむしろ1951年版『遊星よりの物体X』からの影響の方が大きいのではないか。風が吹き込むドアなどはその証左だろう。

手紙の朗読で映画が終わるのは『牛泥棒』が元ネタだと思うのだが、『牛泥棒』が正義の暴走の果ての首つりを批判的に描いていることを考えると何ともアイロニカルな結末である。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。