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[コメント] スポットライト 世紀のスクープ(2015/米)

擬似的なドキュメンタリーとして巧く出来てるとは思うが、なにか傲慢さみたいなものを感じてしまい、あんまり楽しめなかった。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 2002年にボストン・グローブ誌に連載され、カトリック教会に激震が走った事件を、そのチームを中心として作り上げたドラマ。この事件はカトリック教会が大きな岐路に立たされることになる。2005年に教皇となったベネディクト16世は原因究明を公約していたものの、その際にいくつもの不手際を露呈してしまい、教皇を降りるという、とんでもない事件へと発展していった(現職教皇が死以外で役職を降りるのは、なんと600年ぶり)。

 そんな事件を映画化したのが本作となるが、テーマそのものにかなり微妙な問題をはらんでいるため、どういう切り口で映像化するのか?というのがもっぱらの興味だったが、かなり突っ込んだところまでしっかりと映像化されていたのが驚き。

 本作は実話を元にしていると言う事で、『大統領の陰謀』(1976)になぞらえられることが多い。確かに大きな権力を持つ存在に向かい、一歩も引かずに真実を追求するという意味では確かにかなり近い。

 それに、教会からの妨害というのも、別段マフィアを使ってどうこうするというものでなく、あくまで公式に「出せないものは出せない」とか弁護士を通じて行うというもので、リアリティが高い。ドラマ性を高めようとして、ここを大げさにやってしまうと、途端にリアリティが減退するので、これは非常に正しい方法であったと思うし、ここをぶれさせなかったのが本作の重要な点だった。この部分特に重要で、これがあるから、本作が単純な告発作品でも、盛り上げるためのドラマでもないという面を鮮明に打ち出せた。真摯に事件を取り上げようとしているのが分かる。

 そんな意味で、本作は擬似的なドキュメンタリーとしてきちんと機能している。

 ただ一方、観ている間にどうにも居心地が悪かった部分もあるにはある。過去『ユナイテッド93』(2006)を観ていて居心地の悪さを感じたものと同種。真実を追うという側面から、やや一方的な真実に偏りすぎではないか?という思いにもさせられてしまった。

(評価:★3)

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