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[コメント] サイの季節(2012/イラク=トルコ)

照明が雄弁なフィルムであり、ひたすらに闇が映画世界を支配する。街路や邸宅内においてさえ人々の顔に深い陰影を刻み込む薄闇は、牢獄においては絶望的な説得力をもたらす漆黒へと変わる。それは主人公の衝動をより耽溺的、刹那的に加速させずにはおかず、ラストの行動へと駆り立てる。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







詩情溢れる描写でごまかされてはいるが、蓄積された憎悪に彩られた惨劇のメタファーこそがあの場面だ。バフマン・ゴバディによる、彼を母国より締め出した悪意の人々への復讐の姿だろう。彼は根無し草の唄うたいである自分を確立してしまっているため、それは敵に届かないほどに夢幻的になってはいるのだが。悲しい「慣れ」の姿だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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