[コメント] サイの季節(2012/イラク=トルコ)
照明が雄弁なフィルムであり、ひたすらに闇が映画世界を支配する。街路や邸宅内においてさえ人々の顔に深い陰影を刻み込む薄闇は、牢獄においては絶望的な説得力をもたらす漆黒へと変わる。それは主人公の衝動をより耽溺的、刹那的に加速させずにはおかず、ラストの行動へと駆り立てる。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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詩情溢れる描写でごまかされてはいるが、蓄積された憎悪に彩られた惨劇のメタファーこそがあの場面だ。バフマン・ゴバディによる、彼を母国より締め出した悪意の人々への復讐の姿だろう。彼は根無し草の唄うたいである自分を確立してしまっているため、それは敵に届かないほどに夢幻的になってはいるのだが。悲しい「慣れ」の姿だ。
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