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[コメント] オーバー・フェンス(2016/日)

帰り道、自転車を漕ぎながら少し遠くを眺めたくなった。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







佐藤泰志の函館三部作。『海炭市叙景』は購入したので近いうち見る予定。我慢できず先に見に行っちゃいました。

妻と離婚し、子どもとも離れ、大工になろうと勉強中のオダギリジョー演じる岩村。周りの連中ともどことなく少し距離をとり、だからと言って嫌な目で見られるわけでもない。「普通」でいることが彼にとっての理想であり、自分こそ「普通」だと思っている。 そんな彼の目の前に現れたぶっ壊れた女。女なのに聡という名で、突然鳥の求愛行動を真似る姿を目撃する。舞い踊るその姿、完全にヤバい奴だと周りの人は冷ややかな視線を送る。岩村も同じ。だが、「普通」の時の聡にどんどん惹かれていく。自分に真っ直ぐで、聡の表情全てが確かに魅力的。しかし、聡は時々ネジが外れたかのようにぶっ壊れる。そんな時、岩村はまた冷ややかな視線を送る。

岩村の求めた「普通」。真人間を装う彼はどうなんだ。「普通」なのか。「普通」じゃない。「普通」にすることができなかった。ぶっ壊した。相手の気持ちを理解できなかったから。自分しか見えていなかった。それに気づけなかった。聡はなぜ壊れる。気持ちが理解できない。それでも真っ直ぐに真っ直ぐに生きる聡。真っ直ぐに真っ直ぐに求愛行動をしているだけだ。「普通」の人生を送ることを願う岩村の恋。 岩村と自分を重ねてしまって、心にズンと響いた。

オダギリジョーのどこか冷めた雰囲気、そして自分に正直でどこかヤバさを秘めた蒼井優。演技として申し分なく、むしろ説明が過ぎたように感じた。もっと言葉がなくてもいい。この二人なら演技だけでそれを見せることができると思う。素晴らしい演技だった。 同じ学校に通う森の存在はもちろんだが、他の人たちもそれぞれ個性的で重要な役割を担っていた。無駄なシーンは一切なく、きっとこの人の小説は自分好みなんだろうなと思う。

(評価:★4)

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