[コメント] この世界の片隅に(2016/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
涙が出て仕方なかったのだけれども、一体何故涙が出るのかよくわからない。 嬉しいとか悲しいとか、そういう単純な言葉では表現できない感情だった。 この映画は反戦映画などでは無い。断じて、そんなちっぽけなカテゴリーに押し込められるような映画ではない。
この映画は、ささやかな日々をささやかに生きる一人の女性の目線で丹念に描写している。確かにそれはつらい出来事がこの国を襲った時代のお話ではある。でもそこでは「戦時中」いう言葉で一括りにすることのできない一人一人が、それぞれに笑いを、涙を、諍いを、不安を、愛情を、あるいはその他諸々のものを抱えて生きていた。 圧倒的な理不尽でさえ、やがてその日常に溶かし込んで人は生きる。 ことさらに悲劇を訴えるでもなく、困難を乗り越えようと声高に叫ぶでもなく、ただ、そこに生きているということを語りかける。 だからこそこの映画は、今を生きる僕の心にこれほどまで響くのだろう。 ただ生きることへの肯定、それがどれほど大切なことか。生きていてよかったと思えることがどれほど幸せなことか。
そして、このような映画を作りたいと真摯に取り組む人がいて、それに期待する無数の人たちがその思いを支えてこの映画が完成したという事実は、僕にとって、とてもとても大きな希望であり得る。 僕の人生において間違いなく最高峰の傑作になるであろう作品に巡り合えたことを感謝するとともに、ささやかな日々を生きるすべての人に是非見ていただきたいと思う。
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