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[コメント] ブラインド・マッサージ(2014/中国=仏)

ドギツサを身障者に対して施す意味が掴みかねた。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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私は肉親にも先生にも友達の彼女にも盲人がいた。別に普通の人たちであり、相手の不自由のフォローは必要だが、構えてそれ以上のことを強いられたことはない。本作を観た率直な感想は「ドギツイ」だ。社会的弱者を必要以上に低く描写しているように見えるし、そもそもドギツサを身障者に対して施す意味が掴みかねた。

4度ばかりある派手な流血は全然必要なく、語りの累積に自信がないための非常手段めいている。弱視者の視界を表現したような撮影も、主観と客観を行き来するのが不自然で不徹底。どうせやるなら主観表現としてデレク・ジャーマンよろしく画面を真っ暗にすればいいのに、そこまで前衛する気もない。

モノローグは原作の切り貼りなのだろうか、過度に文学的でこれもドギツイ。「盲人は健常者の下」云々などという独白はあくまでグオ・シャオトンの役柄の偏見、固定観念であり、一般化する類のものではない。そして借金取りの前で腹切りの流血だ。いや、『仁義』の川谷拓三みたく開き直って指詰める奴もいたっていいのだが、しかしそれを卑屈な身障者に演らせて、何か生産的なことがあるのだろうか、そこがどうも引っかかる。

ホアン・シュエンが娼婦のホアン・ルーと駆け落ちするのは逆に過大にロマンチックで大甘、村上春樹が思い起こされる。蛇足だが、これで思い出したのは昔観たタイトルも忘れた映画(TVドラマかも知れない)。身障者の青年が両親に、死ぬまでに一回はセックスしたいと告白し、母親は息子の車椅子を押してトルコ風呂(当時)に行き、頼み込み、しかしヤクザに追い返され、帰って親子三人で泣く、というそれだけの話。強烈に印象に残っている(どなたか覚えていませんか)。この逸話の強度は本作の腹切りなんぞよりもずっとリアルだと思う。

興味深いのは設定自体で、中国にはあのようにほとんど盲人ばかりの医院があるのだろうかと驚いた。現状告発という趣旨が本作にあるのであれば、上記感想は覆されるのだが、そうではなかろう。繁盛しているみたいだし。俳優は優れていて、特にセックス好きのブスっ娘チャン・レイが印象に残る。

(評価:★2)

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