[コメント] ラビング 愛という名前のふたり(2016/米=英)
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白人男性と黒人女性の一組の夫婦が歴史を変える偉業を成し遂げた作品。実話であることへの衝撃はあったのだが、加えて異種間結婚というのが問題とされることなど今となってはほとんどないわけだから、冷静に考えてみると差別社会ってのは少し前まであったんだということにも言葉を失ってしまう。人種差別なんてのは本当に根深い問題だし抜本的に変えていかなければ変わらないことだと思うので、例え法律が味方しても、これから先も長期的な目で考えなければいけないことだと思う。
本作では一組の夫婦のために法律が変わり、その後の異種間結婚に関して英雄的なラビング夫婦というのを映すのであるが、決して英雄的に何かを成し遂げようとしていたようには映さない。徹底的して映されるのは法律を変える二人ではなく、愛し合う二人。 当たり前のように愛し合い、当たり前のように子どもを授かって、当たり前のように幸せな家庭を築く。こんな当たり前のことすら許されないというのは本当に難しい時代を生きたのだと思う。結婚しただけで捕らえられ、故郷を追い出され戻ることすら許されない。二人が何かしたわけでもないのに。
法律を変えるほどの裁判ということで何度も弁護士と話したり、住む場所を移さなければいけなかったり、小難しい表情をする二人を見ているとこっちまで眉間にシワがよる。特にリチャードの態度というのは味方である弁護士や記者にも失礼なんだけど、わからなくもないだけに歯がゆい。 ただ、そんな中でも印象的なのは二人の空間での笑顔。純粋に真っ直ぐに愛し合った二人。リチャードは言う。「判事に伝えてくれ。妻を愛しているだけだ。」と。 この作品で描かれているのは本当にそれだけ。法律を変えるために闘った二人じゃなく、愛する二人が法律を変えたのだ。
差別は本当に根深い問題だが、こういう人たちが土台を作り、いろんな人たちの感覚を正し、いつか心から差別や偏見がなくなるような世界がきてほしいと願う。
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