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[コメント] マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(2015/米)

この手の映画に★5をつけるほど、俺はナイーブじゃないはずだった。
ロープブレーク

**ネタバレ注意**
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フランスが戦争より恋愛が好きだって?よく言うよ。なんてアタマの中で毒づきながら最初は見ていた。それに、マイケル・ムーアは見た目がなんとなくターザン山本!に似ているから(異論は認めます)、観る前から眉に唾していた。どうせ稀代のアジテーターに過ぎないんだろうってね。この手の映画に★5をつけるほど、俺はナイーブじゃないはずだった。

でもさ、いいとろだけ取っていく(撮っていく)から「世界侵略」なんだって冒頭にイクスキューズしているし、フランスの小学校の給食のあまりの素晴らしさにも敬意を表して、もう少し我慢して見続けることにした。オムニバス映画なんだと思ってしまえば、玉石混淆はあたりまえだしね。

斜に構えて見ていたにもかかわらず、俺は、ノルウェー編に打ちのめされてしまった。衝撃は、掛け値無しに★5だった。本作は、素直じゃない俺のような人間こそ見るべき映画だったのだ。完敗を認めます。

さて、見終わって、マイケル・ムーア監督の意図とは別に、敗戦ってこういうことなんだなと思った。チュニジアは日本のテレビが取り上げるアラブ諸国のフレームの外に属していた。敗戦国ニッポンは、気づかないうちにアメリカという色メガネをかけさせられていたんだな。

メガネをかけると世界はよく見える。だから、グローバル化の時代には皆がこぞって英語を勉強する。でも、そのメガネは充血していて、だから、海の向こうが薔薇色に映るんだな。

首都東京の海は太平洋だし、日本の田舎者は、こぞって東京を目指す。敗戦を見つめなければ、そりゃ敗戦状態が続くわけだ。

すぐにノミを買ってこなければいけない。我が家には天使のハンマー♪("If I Had a Hammer" by Peter,Paul&Mary)しか無かったことに気づいたから。子どもたちの世代にこの世界を引き継ぐために、裸眼の視力を確保したい。まずはメガネを外して、遠くの緑を見てみよう。

追.マイケル・ムーアが本作でアメリカン・ドリームの定義の書き換えに挑戦したのは、色メガネの色を拭き取る試みだったのだと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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