[コメント] 美しい星(2016/日)
「美しい星」とは、人類が蔓延る地上を俯瞰する異星なのか、守られるべき生命の星・地球なのか。人工的な光を異星の光に読み換える演出は素晴らしいが、着眼点のみで、『2001年宇宙の旅』級の形而上性に達せず不発。
人類の生み出した人工の光が、UFOの光のように、超地上的な眩い光として映じること。だがそれはまた、異星を故郷と信じる者にとっては、懐かしい、帰って行くべき光でもある。
異星人として目覚めていく家族は、そのことによって却って、「この地球でそれぞれが果たすべき使命を持つ者たち」として、地球人家族としてその本音をぶつけ合い、嘘をつかず真正面から向かい合うようになっていく。
家族内だけの話ではない。ヘラついているだけの、いい加減なお天気おじさんが、地球への猛烈な愛に目覚めるのを筆頭に、異星人として目覚めることで各々、社会との主体的な関わりをしていこうとする。
思想的に対立する自称異星人との、長い議論は、三島由紀夫の原作にも描かれているが、こちらは読んでいて、あまりにも戯画的に過ぎ、可笑しさと深刻さを共存させる按配を間違えたように感じられた。対して木村大八は、衒いの無い真剣さによって、このシーンに密度を与え得た。
ただ、結局は家族の話に収斂させてしまう木村の地上的感覚は、映画の飛翔を妨げている。『未知との遭遇』が示すように、宇宙的世界へと飛翔するためには、家族崩壊も辞さない超地上的な狂気が要るのだろうか。
橋本愛の硬質かつ透明な美しさは、この映画において最も超地上的存在ではあった。
母なる地球の底から汲み上げる天然水は、天上の異星と巧く対照を成しているはずなのだが、いまひとつ効いてこない。中嶋朋子が、小心で感化されやすく脆い存在以上のものとして、腰の据わった母性を発揮していればと思う。人物造形を間違えたとしか思えない。
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