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[コメント] ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択(2016/米)

傑作。線路の俯瞰、というか奥に山、画面手前右から列車が走ってくるショット。この監督の画面の中でも一番の絵画的なショットじゃないかと思う。フォード的、エリセ的と云ってもいいショット。続いて街の俯瞰を繋ぐ。画面奥には冬の山が見えている。
ゑぎ

 3話構成。それぞれ、明確に一人の女性が主人公だ。すなわち、1話目はローラ・ダーン。2話目がミシェル・ウィリアムズ。そして、3話目は、リリー・グラッドストーンだ。もう一人のビッグ・ネーム、クリステン・スチュワートはプロット構成的には3話目の脇役に過ぎない(と云っても、存在感は大きいが)。また、3話は云わば薄皮一枚のようにワンシーンだけで連結しているが、その役割りはローダ・ダーンが担っている。すなわち、1話目と2話目の連結は、ダーンの情事の相手−ジェームズ・レグロスが、2話目にも登場するというかたちだ。3話目とダーンの関わりについては、とりあえず、秘匿しておこう。

 1話目の冒頭場面のカット割りも特筆すべきだろう。暗い屋内の左にベッドの中のダーン、右のドアの向こうで男が下着を履くのを映したショット。部屋の右上の鏡にダーンが映っているショットも含めて、人物の関係性を見事に表した端正な画面造型だ。ただし、1話目のメインのプロットは弁護士としてのダーンの活動を描くもので、この冒頭の男はもう出てこない(上述の通り2話目で再登場する)。また、弁護士のダーンの活動と書いたが、正確にはダーンが弁護するのを断った依頼者−ジャレッド・ハリスとの関わりが描かれていて、そこにはハリスの犯罪のプロットが盛り込まれ、ダーンも防弾チョッキを着るハメになる、といった展開があり、普通に面白い挿話と云えると思う。

 2話目はウィリアムズが夫と娘と共に、荒野の中のような場所に一人で住む知人−ルネ・オーベルジョノワの家を訪れ、庭に放置された砂岩のブロックを譲り受けたい(購入したい)という交渉をするだけのプロット展開だが、家族の関係、知人とのディスコミュニケーション(あからさまな無視、あるいは呼吸の合わないやりとり等)を実に肌理細かに描いた掌編になっている。

 そして3話目は、馬の足と人の足を映したショットから始まる。主人公のグラッドストーンは、牧場で働く季節労働者だ(冬の間だけ馬の世話をしていると云う場面がある)。このパートは、彼女が夜間学校で法律(学校法)を教える講師(弁護士でもあるらしい)クリステン・スチュワートと出会い、2人の交流が描かれる挿話だが、グラッドストーンの厩舎仕事が何度も挿入される部分も実に良く、本作全体のポイントを上げていると思う。馬房のドアを開けて、雪が見えるショットの反復。薄っすらと雪の積もった牧場の中、乾草を運ぶバギーのような車と、それを追うコーギー犬のショットの反復。しかし、舞台がスチュワートの住む町−モンタナ州リビングストン。ダーンたちが(多分ウィリアムズも)住んでいるのと同じ町−に静かに収斂していくという見せ方に心揺さぶられる。

 さて、3話共に、唐突な収束を迎えるが、ラストにエピローグとして、後日譚がワンシーンずつ並置されるのも落ち着きがいい。3話共に自動車の運転シーンがスリリングで、映画の感情−登場人物と観客のザワザワした感情をシンクロさせることに抜群の効果をあげている、という点と、3話共に、犬が出て来るという点は、ライカートらしさとして指摘しておきたい。エンドロールの前に「ルーシーに捧ぐ」と出る。

(評価:★5)

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