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[コメント] ウィッチ(2015/米=カナダ)

因果応報の脈絡下にない怪異は不条理と云えるが、唯物論的には男の甲斐性不足に終始する噺で、時代や国の別を問わない普遍的な侘しさがある。善き家長たらんと鼻息荒く頑張る凡夫が嫁のみならず娘にまで経済力と先見性の欠如をなじられる図の悲哀は、我が邦のサラリーマン川柳にうってつけの素材である。
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舞台はニューイングランドというがアメリカ合衆国建国以前の植民地時代ということで、作中人物はアイデンティティ的にも国籍的にも英国民なのだろう、画面と語りには好ましき米欧折衷の気配が漂う(画面アスペクト比も一対一・六六だ)。演出家のロバート・エガースは美術畑の出身だそうで、総額としては乏しかったであろう予算は的確に家屋の造型に投じられ、撮影もまた蝋燭程度しか人工光源のなかった時代のムードをよく創出していると感じる。ただし「森」の深さはもっとよく演出してほしい。一家の家屋が共同体を離れた荒地・僻地にあることは存分に画面に定着しているが、それがために却って森が家屋周りと大差ない印象に落ち着いてしまっている。

慎ましい道具立てのみで成立した小品にもかかわらず犬・馬・山羊・鶏・兎と動物のヴァリエーションが取り揃えられていることには、考証云々以上に演出意識の確かさを見て取るべきだろう。怪異の多くがこれら動物を介在するのも正しい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)DSCH[*] ゑぎ[*]

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