[コメント] ロープ 戦場の生命線(2015/スペイン)
相当に深刻で絶望的な状況を背景にした物語だが、映画の色調は思いのほか明るい感じもする。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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我々から見れば、たかがサッカーボールの取り合いに、小学生くらいの子どもが拳銃を持ち出して大人をねじ伏せた時点で目が点になる。しかし、それが驚くに値しない日常だという世界が、この世にあることを知らしめただけでも本作の意義は計り知れないと思う。
そして、深刻だからこそ深刻ぶっても仕方がない、ということなのだろうが、そこには人が生きていくことの力と希望もあるように思えた。
何故なら、本作において「皮肉」はほとんどが否定的というか、マイナス方向に作用している。ようやくロープを手にして井戸から死体を引き上げる、その直後の皮肉が典型で、やるせない徒労感を抱えた彼らに新たなミッションの要請があり、「雨さえなければどうってことない」と向かう彼らに降りかかる大粒の雨。
しかしその大粒の雨は、彼らに苦労を強いたかの井戸に僥倖をもたらす。ここで「皮肉」はプラスに転じたのだ。
出来すぎだし、演出のあざとさにも見えるが、彼らの苦労をずーっと見てきた観客はここでようやく、ほっとするのではないだろうか。それが本当に大事なのだと、強く思われるのだ。
だから、本作を見てよかったと心から思えるのだ。
それにもして、ここまで奮闘する彼らにしても「部外者」とならざる得ないとは、何ともやるせない。
そしてそれを「難しい問題だ」で済ますわけにはいかない人たちを描いたのが本作かもしれない。
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