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[コメント] 君の名前で僕を呼んで(2017/伊=仏=米=ブラジル)

自然光と自然音の取入れがとても心地よい画面と音の映画だ。特に撮影はタイからサヨムプー・ムックディープロムを招き、奇抜な繋ぎを廃して(一部ジャンプカットもあるが)、あくまでも静謐なカメラの視点を突き付ける。
ゑぎ

 それは、自然光を基調としているが、決してナチュラルな透明感を志向しているだけではない。例えばピントが甘いカットも多く使われているし、ティモシー・シャラメアーミー・ハマーの二人が旅行中の、夜の舗道のシーンでは、なぜかスプロケット穴(フィルム穴)が写っているテイクさえある。あるいは、二人で、ピアーヴ・メモリアルという記念碑に立ち寄るカットは、ワンカット中に2回ティルトアップをし、記念碑の銅像と、隣接する教会の尖塔の十字架を見せるという、観客の視点を強制する硬質なシーケンスショットだ。このように、意思のはっきりした演出が継続しているので、見る側の緊張感も持続する。

 さて、配役について云えば、何と云っても主人公のティモシー・シャラメが超絶美少年で惚れ惚れしてしまうのだが、対するアーミー・ハマーは、少々とうが立っているというか、でかいし、えらそうで、ミスキャストとまでは云わないがシャラメが勿体ないと思えてしまった。シャラメの父母も良い存在感だ。特に、父親のマイケル・スタールバーグはエンディング近くでとびっきりの見せ場がある。このスタールバーグの科白のおかげで、オスカー脚本賞じゃないかと邪推してしまう。(ま、それぐらい臭いし、不要な科白と云えるかもしれない。 :-P )

 また、エピローグの雪降らしはいい。それまでの夏の陽光と素晴らしい対比をなす。さらにラストカット、というか、エンドクレジット中のシャラメを映した長回しが見事なアイデアで、記憶に残る。シャラメの後景のフォーカスが外れた部分に食事の用意をする母たち。その後ろの窓の向こうで、しんしんと降る雪。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ペペロンチーノ[*] jollyjoker

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