[コメント] ダンガル きっと、つよくなる(2016/インド)
砂上の格闘技クシュティーから世界の共通肉体言語レスリングへ、小乗から大乗への流れを丁寧に描いている。クシュティーの戦士たちを映しだすオープニングには敬意と愛情が溢れており、好きだ。(161分オリジナル版)
ストロング・スタイルの演者アーミル・カーンの肉体改造も凄まじいが、レスリングシーンの設計が実に見事。これに応えた子役と大人の姉妹役は素晴らしかった。
この映画では、南アジアの伝統格闘技クシュティーと世界共通のアマチュアレスリングが描かれる。娘たちはまずパンジャーブ地方のクシュティーに出場し、男たちと闘う。ちなみにパンジャーブ地方は狂虎タイガー・ジェット・シンの出身地でもある。砂上の格闘技クシュティーから、ルールの異なるアマチュアレスリングへの移行は、実にきちんと描かれている。3ピリオド制、ポイント、なによりも「マット」で行われる競技であることが強調され、サークルの色分けにまで言及される。映画がアマチュアレスリングをこれほど真摯に描くのは、映画史においてはじめてではないだろうか。オレは感激した。
現実のギータとバビータの姉妹は、アジア大会や世界選手権などで吉田沙保里や伊調馨ら日本女子レスリングの怪物たちに苦杯を喫している。強豪ひしめく世界大会より、コモンウェルスゲームズ(英連邦所属国による国際大会)に狙いを定めたのは父マハヴィルの戦略らしい。
女子レスリングは比較的新しい競技で、日本がやたら強く、他にアメリカやロシア、ブルガリアなんかも強い。しかしギータとバビータ姉妹やこの映画の影響で競技者を目指す女性が増えれば、何しろインドの人口なので、いずれ勢力地図も変わってくることだろう。ダンガル、ダンガル。
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