[コメント] スタア誕生(1954/米)
白黒の静止画つなぎによる時間制御。本編と劇中スクリーンと劇場舞台と撮影スタジオの巧みな越境。後半になればなるほどミュージカル要素が連打され、夫婦の閉塞状態を象徴するリビングでのワールドツアーで頂点へ。観る者を引き付けて止まない緩急の仕掛けが満載。
3時間という長丁場にもかかわらず、一瞬たりとも緩みや隙がない計算されつくした演出に驚く。まさに“渾身”という表現がぴったりの力作エンターテインメント。
本作は、私生活が荒れていたジュディ・ガーランドのために準備された銀幕復帰作だそうだ。彼女の才能は、ハリウッド黄金期の資金と演出家とスタッフのあり余る総力によって支えられていたのだろう。求められた役割に懸命に応えようとするガーランドは、もはや本人の意思では制御できない“あの時代”に祭り上げらてしまったスタアだったのかもしれない。
この作品にかけられた製作者たちの桁外れのパワーには、誰にも止められない人智を超えた時代の勢いが秘められているようで、ある種の恐ろしさを感じた。
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