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[コメント] 斬、(2018/日)

強い炎のイメージと刀鍛冶の画面から始まり、強烈な音の映画であることを宣言する。殺陣シーンもそのカタチ以上に音が印象に残る。
ゑぎ

 カメラワークは、まず冒頭、田圃の畦での池松壮亮−杢之進と前田隆成−市助との太刀練習で、むやみに動き回り、ズーミングも使いまくるので、とても危惧したのだが、その後落ち着いたのでホッとする。しかし、墓所での果し合いの場面あたりから、ポン寄り(カット・ズームイン)、ポン引き(カット・ズームアウト)が目立ち始め、中盤以降、ほぼ半分のカットでこれをやっているんじゃないかと思うぐらいになる。例えば、塚本晋也の澤村が、百姓家の引き戸を開けて表へ出てきたニーショットの次に、少し寄ったバストショットを繋ぐ(このとき、時間は途切れず継続している前提)、というようなカッティングがこれでもか、と見られるのだ。多分、デジタルの世界になり、容易にできるようになったのだろうが、この技法って、こゝぞ、という時に使うから良い(カッコいい、あるいは意味がある)のであって、むやみに使うと、節操がない(何も考えてないんじゃないか)と思えてしまうのだ。大林宣彦『花筐/HANAGATAMI』ほど、神経症的な使い方ではない(さりげない使い方)とは云え、私はかなり気になった。

 さて、池松壮亮、蒼井優、塚本晋也、この主要キャストの造型は見応えがある。それぞれ、少々類型的な感もするが(苦悩する剣士、近現代的女性像、島田勘兵衛的リーダ)、皆激しく強いキャラだ。特に蒼井の台詞、所作(竹とんぼのシーンだとか)には現代的過ぎて違和感を覚える部分もあるが、そもそも彼女がラストまで、ほとんど全ての現場に顔を出すのが良く、彼女のショットがラストカットであることを考えてみても、蒼井優の扱いこそ、本作の肝だということだろう。ラストのラストで、いきなり日が陰り、ローキーとなる。そして悲痛な叫び声(という音)。

(評価:★3)

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