[コメント] ドラブル(1974/米)
こと面白さにかけては私的映画史上でも屈指の奇跡的傑作『突破口!』やダークなエンタテインメント性に溢れた『ダーティハリー』と比較すればさすがに一段落ちると思うが、やはりロケーション撮影中心の七〇年代シーゲルは絶好調だ。これも相当に面白い。「風車小屋」は『海外特派員』由来か。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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地下鉄構内からの追いかけっこ、カバン銃(お茶目着想!)を炸裂させてしまうワイン蔵、風車小屋の対決など、アクションシーンの濃密さには吃驚&惚れ惚れするばかりだ。しかし、これは決して全篇をアクションで押し切る映画ではない。マイケル・ケインが妻ジャネット・サズマンと街で落ち合うために電話で符牒を伝えるシーンや、その後のバス。ワンシーンのみのドナルド・プレザンスの家庭描写。そのプレザンスの非人間的/官僚的でありながらどこか憎めない豊かな造型(このように平然と類型性から逸脱したり、場合によっては逆に潔く類型性に徹したりする按配を、シーゲルをはじめとする優秀な七〇年代作家は非常に得意としているように思います)。そして何より感情を押し殺しつつも滲み出てくる、子を想うケインの心。加えてケインの声帯模写(プレザンスの声真似)など本気か冗談か判じかねる向きもあるだろう描写も、私にとっては上級のユーモアだ。笑いのない映画を愛することは難しい。一貫した曇天のムードも映画に深みを与えている。
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