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[コメント] さらば冬のかもめ(1973/米)

これが面白いかというと一般にはそんなに面白いものではないだろう。これを今、面白がれるというのは多分何かの鍛錬をした人ではないかと思われる(大げさだが)。演技や演出を学んでいる人だとか、撮影や照明にかなり興味がある人だとか。
ゑぎ

 なので、そういう何かテーマを持って見ないと面白がれないかも知れない。そしてこんな雰囲気の、現在のアメリカ映画ではめったにお目にかかれない、ある意味マニアックな、ある種趣き深い映画が立て続けに作られ、受け入れられていたのが1970年代だったと思う。(日本の風俗にてらして云えば、名画座と呼ばれる二番館で廉価に再販され、我々はその機会の恩恵を受けていた。)

 本作の世代の映画をアメリカン・ニュー・シネマという呼称で一括りにすることも可能だが、『俺たちに明日はない』が1967年度、『明日に向かって撃て』が1969年度の作品であり、本作あたりになると、また少し違う感覚がある。決して劇的な事件が起こらない、という訳ではないのだが、一世代前の映画と比べるなら、より自然な科白、演技、光を志向した映画であり、「傑作」とか「名作」というよりは「佳編」ぐらいの表現がぴったりくるような映画だ。この『さらば冬のかもめ』もそんな佳編の一つだろう。

 私にとって、1970年代の光の創造者はハスケル・ウェクスラーゴードン・ウィリスコンラッド・L・ホールネストール・アルメンドロスなどなどだが、彼らの中に本作のマイケル・チャップマンも間違いなくその中心として存在する人だ。私にとっての本作の良さは最も好感のもてるジャック・ニコルソンを見ることができる、という部分も大きいが、しかし何よりもマイケル・チャップマンの冬の光を感受できることだ。本作の主人公はニコルソンと同等レベルでチャップマンだと思う。

#備忘

・ゴードン・ウィリスの助手だったマイケル・チャップマンの撮監処女作。

・バーで知り合った女と行ったパーティのシーンにナンシー・アレンがいる。

・ポーツマス海軍刑務所の手続きをする上官はマイケル・モリアーティ

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)jollyjoker[*]

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