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[コメント] ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス(2017/米)

新鮮なことに、一貫してナレーションやテロップが一切なく、撮られている人の名前も肩書きもわからなかったりする。それでも会話やスピーチの内容を聞いていればどういう人が、何について話をしているかはおおよそわかってくる。
irodori

観客としては普段以上に画面への集中力が高められ、想像力も刺激される。ドキュメンタリー作品でこの感覚はなかなかない。

製作サイドの人間の声は聞こえず姿も見えない。極力製作側の存在を消して、できるだけあるがままのニューヨーク公共図書館の様子を撮ろうとしている姿勢が伝わってくる。

時折挟まれる、図書館の建物内のワイドショットの映像も楽しい。図書館の近所の往来の様子(消防車が頻繁に通り過ぎる!)や、人々の様子から感じられる生活感もいいアクセントになっている。これが挟まれることで、図書館内部の議論やライブラリートークなどが俗世から離れた特別なものではなく、その土地に根ざした、人々に寄り添ったものだということが肌感覚で理解でき、自分もそこにいるかのような感覚を覚える。

また、映像構成面や編集面などの技術的面白みに加えて、作品内で語られるテーマ自体が面白く知識欲も満たされる。

図書館のボードメンバーらが、運営方針などについて話すミーティングを聞いていると、CEOを中心とする彼らの仕事術の一端も伺えて、感心させられると同時に触発されることにもなった。

なお、イスラム教と奴隷制の話だったり、黒人コミュニティ内の暴力の話だったり、奴隷制とマルクスとリンカーンの話だったりと、リベラル寄りのテーマでの議論が多く取り上げられていた。このこと自体は自分の関心を大きく引いた点ではあるが、あらためて冷静に考えるとアンバランスではあるかもしれない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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