[コメント] アス(2019/米)
都市伝説の真顔語り。あるいは法螺ホラー。『ゲット・アウト』より『イット・フォローズ』の次作と云ったほうが得心の捗りそうな味わいは、当然ながらマイケル・ジオラキス撮影の醒めた文体に拠るところが大きい。物語は畢竟、原題の意味するものが「私たち」から「合衆国」へ移行する過程、それである。
観客を惹きつける話芸についてはじゅうぶん認めるけれども、ルピタ・ニョンゴ一家の攻防を具体的に肉づける演出には驚きが欠けている。たとえば一家は四人四様の得物を振り回すが、いずれも家宅にあって何ら不自然でないものばかりで、突飛なサムシングが含まれていない。むろん、このあたりでリアリティを重んずることによって噺の荒唐無稽と均衡を図ろうとしているのだと庇い立てることもできるが、私はこれを支持しない。ジョーダン・ピールがとても頭のよい脚本家であることは間違いないだろうが、演出の才に対する疑問符はまだ拭い去られていない。
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