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[コメント] 男はつらいよ お帰り 寅さん(2019/日)

寅さんお帰りです。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 音信不通のまま、二十数年が過ぎている―。有り体に言えば、そういう設定なのだ。さくら(倍賞千恵子)の台詞に、「お兄ちゃん(寅)が帰ってきたときのために」(二階の部屋を空けて待っている、のニュアンス)とあったが、その言い方も、実際はもう帰って来ることはないと分かってる、という芝居だった(と思う)。つまり、寅は行き倒れ、野垂れ死に、身元不明者としてなくなった―。平成の時代にそんなことあんのかな、とも思うが、「寅さん」て、そういう映画なんだよな、おそらく。多分に残酷な。

 残念なところは、せっかくリリーが出ている(出た理由は、浅丘ルリ子が存命だったから、だけじゃないの?)のに、寅のその後の消息を語らない(=僕は、最終48作『紅の花』をTVで再見し、そう読んだのだ)。語られるのは、映画で描かれたエピソードだけだったこと。

 山田洋次監督はさすがだなと、思ったとこ。回想シーンの差し挟み方が上手い。自然な感じで入っていく。本編で見た記憶はないけど、そんなワザも持ってたのか。

 ただ、本作を二度見たいとは思わない。本編=回想された過去作品を見直すことはあっても。それで自立した一つの作品と言えるのかと、いう気はする。

 後藤久美子の芝居が下手さ加減含めてそのまんま。「泉だ!」と懐かしい気持ちになった。満男とのキスシーンも良かったよ。夫がいるのにそりゃあり得んというご指摘はごもっともですが。

 タイトルは「お帰り、寅さん」だが、裏腹に、二度と寅は帰って来ないのだと、ヒシヒシと感じさせられた。もう二度と、寅の話が新しく紡がれることはないのだと。すなわち渥美清の不在。

 お帰りはお帰りでも、居酒屋かなんかで、「お客様お帰りでーす」のお帰りだね。

20/1/30記

(評価:★4)

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