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[コメント] 怪盗ルパン(1957/仏)

見せる/見せない、ということをとても意識させる。題材からの要請(盗みの映画なのだから!)という面は勿論あるが、そういったレベルを超えているように思う。
ゑぎ

 どういうことかと云うと、例えば、大邸宅でのダンスパーティのシーンで、壁に掛けられた絵画の「見せる/見せない」とは、どのタイミングで、どうやって消えたか(盗まれたか)という演出だ。宝石商が持ってきた宝石の「見せる/見せない」も同様で、題材からの要請という言葉を使っている。対して、ドイツの山上の城に舞台を移した後に描かれる、リゼロッテ・プルファーの祖父と叔父が製作した装置の見せ方はどうだろう。最初はちょっとだけ見せる。とても変な音がしていて、いったい何のための機械なのか全然分からない。後半になって、ルパンが種明かしをし、初めて全貌が見せられるのだ。あるいは、これも、この城の中にある、クロヒョウの部屋。最初はクロヒョウしかいないと思わせておいて、あとのシーンで、どんな部屋かを過剰に見せてしまうのである。

 さて、ジャック・ベッケル晩年の余裕綽々たる娯楽作。しかも絢爛たるカラー映画だ。そして、怪盗ルパンってやっぱりこういうのが本家本元なのだと思うのだが、演じるロベール・ラムールはとても自信に溢れた成熟した紳士なのだ。ほとんど逡巡といったものがなく、スリルはあるが、危機一髪といった程でもない。安定して見ていられるし、これはこれで面白いが、若者があっち行ったり、こっち行ったりして悩んだり走り回ったりする映画の方がやっぱりベッケルらしいとも思ってしまった。

#宝石商から盗む手口は『とらんぷ譚』(サッシャ・ギトリ,1936)とほゞ同じ。

(評価:★3)

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