[コメント] 2人のローマ教皇(2019/英=伊=アルゼンチン=米)
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先日ゴールデングローブ賞の結果が発表されましたが、ドラマ部門でノミネートされていた本作。タイトルにある通り、二人のローマ教皇の対話が中心の作品です。 当然ローマ教皇が二人も存在するはずもなく、これは2013年に当時のローマ教皇が生前退位されたときのことをさしており、本作を見るまで知りませんでしたが、教皇における生前退位というのは前代未聞。500年以上もそのような例をなかったそうで。単なる新教皇即位ということ以上の重みがある、まさに時代の転換期だったわけです。
もちろん、その背景には二人の教皇の苦悩や葛藤があり、基本展開は会話劇なので単調になりがちですが、そう感じさせない辺りが本作の魅力だと思います。 基本的にこの手のドキュメンタリー展開の作品は苦手ではありますが、時折挟まれる温かみのあるコミカルな会話は不思議と飽きがきませんでした。特にラストシーンは至高ですね。サッカーワールドカップを見る二人の姿は見ていてものすごく温かい気持ちになります。
主演の二人の演技も素晴らしいです。アンソニー・ホプキンスは昔から変わらないと思ってましたが、さすがにちょっと老けましたね。だからこそできる役だったようにも思いますが。ジョナサン・プライスの方はコンクラーベで可決された時の表情を見るだけでも価値があると思います。
また。宗教的な観点の知識がない自分からすると誤解があるかもしれませんが、この作品全体が一つの告解になっていますよね。キリスト教か何かで罪を告白するやつ。それに対して赦しを与える神がいる。ただ、あくまでそれは神からの赦しなのかもしれませんが、あの赦しは明らかに他者からのものであって、そういう周囲の存在の大切さを意識させるメッセージ性も含まれていましたね。
教皇がどれだけ神に近く、何億人の代表だとしても一人の人間であることにかわりはなくて、罪がない人間などいない。他者に認めてもらう素晴らしさを実感しない人間などいないのだと改めて感じさせる作品でもありました。
あとあれは完全にバチカンで撮られてますよね。システィーナ礼拝堂とかも出てましたし。ただ、一度旅行で行ったことがあるのですが、あそこは普通に撮影禁止だったと思うので、どうやら本物ではないらしい。実際はローマのスタジオに2カ月かけて建造したみたいです。いやはや、覚悟が素晴らしい。
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