[コメント] ミッドサマー(2019/米=スウェーデン)
あまり感心できない。ジャンルものの中の、奇をてらった類でしかないと思う。
カルトへの傾倒は社会の残酷に負けて逃れた者が歪な価値観に取り込まれていく心理の物語だと思うし、実際主人公のそれは冒頭にこってり描かれるのに、このモチーフが幻覚の言い訳にしかなっていなくて、途中から何の役にも立っていない。逆に白い服を着た彼らには何の背景も見えなくて、ただ伝統だというのだけれど、その伝統に重みが見えないのは、文化としての説得力が希薄だからだ。数字に置き換えたって仕方ないのだけれど、外部から子種を欲しがる存続のための事情を語りながら、たった一人の若者からたった一回の精子を搾り取る傍らで何人の同胞を殺してんだと思うと、もう信じられないというか、ホラーのためのホラー演出にしか見えない。ゴア描写もむしろ一発でやめておけば鮮烈に刻まれるのに、あれこれ重ねられると、やっぱり信じられなくなる。食事のシーンの違和感、前半の白夜的明るさ、花の色彩の恐怖などは興味深い。特に最後の、花を敷き詰められてウミウシみたいにされちゃった主人公の姿なんかは非常に目を引く。そういう絵的なセンスは感じる。
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