[コメント] 裸の町(1948/米)
開巻はマンハッタン島の空撮。製作者マーク・ヘリンジャーのナレーションで、スタフやキャストが読みあげられる。この趣向はゴダール『軽蔑』の元とも云えるだろう。
本作のことをドキュメンタリータッチと評するコメントをよく見かけるが、私はほとんどドキュメンタリータッチとは思えなかった。単に、街頭撮影というだけじゃないか。ドラマ部分は、ダッシンらしく、濃い演出が施されている。あるいは、全般にダイアローグは、かなりユーモアに溢れており、観客を笑わせようとしている脚本だろう。主演のバリー・フィッツジェラルドも、いつもの飄々としたキャラクターなのだ。実は見る前は、フィッツジェラルドが冷徹な刑事を演じているのかと思っていた。
事件の被害者を回想やフラッシュバックで登場させずに、周辺の人物の証言や心情の吐露によってキャラクターを(そして事件の全貌を)浮かび上がらせる演出は流石に上手いもので、面白さではかなり面白い映画だが、ダッシンの中で、これがとりわけ傑出しているとは思わない。
被害者の友人役でドロシー・ハート。その婚約者は嘘つきのハワード・ダフでこのキャラクターも面白い。被害者の両親に遺体を確認させるシーンが、厳しくかつ痛切な演出で出色。新人刑事ドン・テイラーの家庭描写(妻子とのやりとり)は清潔感溢れるもので、清涼効果はあるが、嘘っぽい。
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