[コメント] 青春の門(1981/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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昭和13年に殺された文太と松坂慶子の息子が主人公。炭鉱夫の頭(カシラ)の文太、米買えないので物品配分所へ大群で押し寄せて「ぶっ壊し」で米俵運び出し、落盤事故に際して最深部の朝鮮人を救出して死去。
息子は朝鮮人の子を集団でイジメて松坂に怒られて、さしの勝負に行って立会の渡瀬恒彦。落盤事故では文太に救われたと礼を云い、松坂は主人がうかばれたと礼を云う。終戦で朝鮮人労働者は炭鉱幹部襲い、落盤に見せかけて仲間を殺してボヤ山に埋めたと糾弾、幹部は逃亡しようとしたから憲兵が撃ったのだと釈明するも、紐で縛られている(浦山版はもっと残虐らしいが未見)。
渡瀬らの朝鮮人労働者と加藤和夫の社長との労使争議、警察に続いて若山富三郎のやくざも介入し、渡瀬は正当防衛で加藤を殺してしまい、逃亡。若山は映画を任侠ものに寄せており、やくざとブルジョアの関係が宴席の件で描かれている。ヤマから仕事とられた北朝鮮の旗掲げる祖国防衛隊(在日朝鮮人連盟と看板がある)に若山が狙われる終盤。鉄砲玉の小林稔侍奪還に若山が突入、渡瀬と対決し佐藤浩市は板挟みになる。このジレンマが特に解決されないのは、この時点では続編へ期待を繋ぐものにしか見えないのだが、描かれることはなかった。
主題のひとつは過剰な性欲なのだろう。序盤に少年が自分の折れた歯を娘の陰部に挿入して生やさせる悪戯は、女性器に歯が生えているというフロイト風の去勢恐怖を想わせる(当然意識しているだろう)。少年は逃げて夜のボタ山で火を噴く骨を見るが、撮れていないしへんなエコーかけた効果音も80年代系でショボい。
母の松坂と渡瀬の同衾を想像して自涜する件はもの凄い倒錯で、こんなインセストタブー破りはちょっと想像しにくい。成長して中三の佐藤浩市(本作でデヴュー)登場ですぐさま自涜し、杉田かおるをすぐさま押し倒すのがやり過ぎ気味。最後は病床の松坂の胸に幼児のように頬を寄せている。「母ちゃん、色白かね」。こいつは何なんだろう。
結局、本編の総括的な感想は、親父が文太みたいな立派な人だといいな、若山みたいな面倒見てくれるいい友達が出てくるから、という感想なんだが、そんなことでいいんだろうか。佐藤にとって渡瀬や杉田の不幸は通過点に過ぎない。なんか「次郎物語」みたいな成長物語で、ひたすらユルい。松坂好演だが深作夜の演技指導のせいと思うとバカバカしくなる。親父の骨喰らうラストは予告通りだが異様。
佐藤が色気あり過ぎる高校教師影山仁美とバイクでデートするとき、博多でかかっているのは『テキサス決死隊』、夕陽がやけに美しい。結核の松坂に若山は進駐軍にペニシリン貰いに行くと云っているが、その割にいつまでも入院しており、最後は死んでしまう。美術は平均点でしかないが瓦山と呼ばれる山がとても美しい。田川市らしい。小説の刊行10周年記念映画と予告編にある(累計1800万部も売れた)。「筑豊篇」だがこの副題は映画では浦山版に続いて略された。懐かしい「織江の歌」は本編では使用されない。
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