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[コメント] 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編(2020/日)

熱くて泣ける活劇は大好物のはずなのだけど……ちょっと期待しすぎたのかも知れない。煉獄さんのキャラ立てが思いのほか浅かった。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作は未読、アニメは今のところ全話見た上での感想。

前半は夢を操る鬼・魘夢との戦い。炭治郎の家族との触れ合いのシーンはなかなか沁みた。が、魘夢と本格的な戦闘になった時の「触手」の描写があまりにCG然としていたのがいただけない。スピード感などを重視した結果なのかも知れないが、宮崎駿や庵野秀明なら絶対にあんな描き方はしないだろう。むしろ嬉々として触手の描写に全力を注ぐはずだ。

魘夢自体は普通に最後まで悪い奴のまま終わるという、このシリーズとしては逆に珍しいパターンの敵だった。その分キャラクターとしてはあまり面白くはない。

そして後半は唐突に表れた上弦の鬼・猗窩座と、炎柱・煉獄との戦いになるわけだが……。この猗窩座という敵がまたつまらない。単純に腕力と体力だけが強いという何の工夫もないキャラで、煉獄と真正面からただひたすら殴り合うだけ。強さの演出としては、那田蜘蛛山編の累の方が遥かに絶望的な強さ・怖さを表現できていたと思う。原作では猗窩座の違った面も見られるのかも知れないが、少なくとも映画では描写不足だったことは間違いない。

一方の煉獄はと言うと、こちらも正直物足りない。ほとんど表情の変わらない、掴みどころのない人物であり、感情移入するにはキャラ立てのエピソードも炭治郎たちとの絡みも少なすぎる。それゆえ彼が悲劇を迎えても泣けない。

そして何よりも、煉獄が命を落とすまで奮闘したのに、結局は猗窩座に逃げられてしまうという煮え切らなさにがっかりした。原作の一部を切り取った話だとはいえ、一本の映画としては不完全燃焼も甚だしい。

ダラダラと書いてしまったが、映像や音楽は非常に高水準であり、酷評するほどダメな作品というわけではない。ただあまりにも「号泣した」「400億稼いだ」などの高評価が溢れていたため、こちらもハードルを上げて見ざるを得なかったし、残念ながらそれに応えてくれるほどの内容ではなかった。サムライのアニメであれば、クレヨンしんちゃんの『戦国大合戦』の方がずっと泣ける。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)クワドラAS[*]

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