もうまったく手抜きのない画面なんだけど、話が転がっていかない感じだった。旅館の宴会場からぐっと物語が動いていく。といってもそれは心と感情のドラマなんだけど。のんは能年玲奈時代からホンモノだと思っていた。ホンモノというのは、自分の感性感情が第一で他とずれても修正の聞かない正直さ、といったところがホンモノ。

それにくわえて大九明子は画面は音や細部に渡って手抜きのない細かな設定演出がホンモノ。だからこの映画でもそうした意味ではほんものの見どころ満載だが、33歳独身女性のドラマとしてはちと寂しい。

それは会社員のくせになんの会社かわらない。実家との相克がありそうだが、何もでてこない。高校大学時代の話は出てくるが、イタリアの妊婦橋本愛じゃ、ファンタジーすぎる。もう少し低俗な一般大衆の現実をいれてくれてもいいんじゃないか、と思った。コロッケ屋の行列は都電終点三ノ輪橋あたりの商店街っぽいリアリティはあるけどそれは本筋じゃないでしょ。

もう70をすぎると世間がまともに相手にしてくれないから、自分を相手に厨房みたいにわめくに限る。メーワクな話だ。大晦日の渋谷はほどほどに混雑していた。マスクをしていない美人が歩いているのをよく見かけた。