[コメント] BLUE ブルー(2020/日)
才能とは物事を他人より巧みに成し遂げる能力のことで、強さとは物事を他人より持続的に維持できる能力のことだとしたら、瓜田(松山ケンイチ)だってその資格に値する。思えば学校にだって職場にだって、どこにだって“本流”のすぐ隣に瓜田のような奴はいた。
才能と人の強さの話だ。裏返せば弱さの話でもある。いちばん強いのは誰だろうかと考えてしまう。
連戦連敗の瓜田(松山)がボクシングに見切りをつけられないのは、現実の勝敗に正面から向き合わない彼の弱さかもしれないが、誠実さを武器に“そこに”い続けるのはある種の才能であり強さだろう。一方、ボクサーとしての小川(東出昌大)の才能と強さは誰もが認めるところだが、自身の身体の異変に正面から向きわず“そこに”い続けようとするのは現実からの逃避であり弱さではないのか。
楢崎(柄本時生)の勝利に対する素朴で実直な欲望は強さになり得るが、過剰な自信が持ち味だった洞口(守谷周徒)の強みがあっけなく打ち砕かれたように、能力が勝るものが生き残る世界では、勝ちたいという思いのみに支えられた強さなんて、独り善がりという弱さと紙一重なのだ。
結局、強いだけの人間なんて存在しないし、才能の有無なんて人の幸福となんの関係もないのだ。それぞれの“ひたすらさ”を生きる青コーナーの青年たちの姿をみて、そんなことを考えた。
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