[コメント] モーリタニアン 黒塗りの記録(2021/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
その強権的で狂暴な実態が何度となく話題になるグアンタナモ収容所は何のためにあるのか、劇中で主人公の一人ジョディ・フォスターは、看守を米国法から守る=法の支配に属さない看守をつくるためだと看破したが、なるほどそうかと思わせる指摘だった。
原作は未読だが、本作はもう一人の主人公タハール・ラヒムを、能力にも秀でて人格的にも高潔で、陽気な人物として描いている。
事実はどうであったかはわからないが、こういう風にでも描いてもらわないと、とても正視出来るものではない凄惨な現実を描いているだけに、映画として成り立たなかったのではないかとさえ思えてくる。
さらに、人身保護請求裁判で勝訴して、その拘束の不当性が明らかにされてもなお、数年にわたり拘束され続けたという事実には愕然とする。
現実には正義がたとえ勝利しても、簡単には変わらない。その厳しさをひしひしと感じさせたジョディ・フォスターの力演は見応えがあった。
本作は実在する人物の手記を基にし、主要な登場人物には実在の人物がモデルとなっているが、映画としてはあくまで、一つの物語になっている。その中で、一際、特徴的なのが米軍属弁護士役のベネディクト・カンバーバッチだと思う。
おそらく彼だけは、まったくの架空というか、創造の人物なのだろうが、その姿を通じて、この事件全体の本質的な姿、誰かに報いを受けさせるべきだとしても、それは誰でもいいわけではない、という製作陣のかなり明確な主張を感じることができる。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。