[コメント] ほんとうのピノッキオ(2019/伊=仏=英)
テクスチャ―の充実と、奔流のようなイメージの横溢は賞讃に値する。だが、それらを活かせぬ淡々とした演出によって、じつに大味な作品にできあがってしまった。ここはデル・トロ版を待つべきか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
無駄に美少年であるピノッキオをめぐる、正義なきブラックユーモアに律された汚濁の大人社会。この表現はすばらしい。堕落しきって栄養失調に陥りそうなネコとキツネ。悪意なく子供をロバとして育成する山師。発狂したかのようなサルの裁判官。ドSの教師。その他背徳的でグロテスクなあれこれはほんとに見ものなのだが、演出は綺麗ごとに逃げ何も残らない良い子向けに終始する勿体なさ。
ディズニー版を待つまでもなく、放蕩三昧の果てにロバに変身させられる子供たちの悪夢は原作最大のホラーシーンだ。この描写で物語にふるえた現実の悪童どもは、薬が効きすぎてマジメ人間に思考改造される…これが当時のヨーロッパを席巻した「ホラー式道徳物語」の名残りだった。だが、この映画でのこの挿話の甘ったるさにはズッコケそうになった。あッという間に子供たちはロバになって売り飛ばされる。かれらは人間の子供だったのだから、ロバになってゆく運命に嘆き恐怖と絶望に身をよじらせていいハズなのに、ピノッキオがロバとして使いモノにならなくなり、生きたまま海中に沈められるシーンのあっさり具合はどんなものか。人形に戻るシーンなどキレイに魚たちの群舞に消され、すっきりしきった変身であった。セーラームーンかい。
結局キレイな描写と優しさの鼓舞で、これは良い子むけになってしまった映画だった。もっと主人公を窮地に追いやりなさい。それが「ほんとうのピノッキオ」である。
(評価:)
投票
| このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。