[コメント] レイジング・ファイア(2021/香港)
ニューポリ(『香港国際警察NEW POLICE STORY』)のニコラス・ツェーが、すっかりグレちまって。極限のハイクォリティに驚嘆しつつ、香港英雄片の総集編のような職人の流れ作業テイストも。
ドニーさんがやってきた現代アクション、いつもあんまりうまくない暴力映画とミステリ話法の融合、ジョン・ウーの浪花節、48時間の拘束から解放されて警察署から出てゆくニコラス・ツェーは『ダークナイト』だよな。ドニーさんの警棒vsニコラスのナイフなんて『SPL 狼よ静かに死ね』のリフレイン。蓄積の上に蓄積を重ねて作られ続ける香港映画は、撮影所システムのようなものが生きている業界の匂いがする。実際はもう昔みたいな撮影所などないのかもしれないが、強固な徒弟制度の中で膨大なノウハウが失われずに進化し続けてゆくこの独特の感じ。つまり香港映画は点ではなく線で捉えるべき継承の世界で、一方でひとつひとつの映画の独自性、「かけがえのなさ」は若干薄く感じる。
『レイジング・ファイア』も現時点の香港映画の到達点であって、1本の映画として突出したドラマではないと感じる。だってマー、ありそうな話といえばありそうな話で。ただそのありがちな話を巨匠ベニー・チャン(これが遺作)、宇宙最強ドニーさん、グレたニコラス、谷垣健治らのアクションチームが手掛けると、世界に類例のないこれほどの高度に達してしまう。しかしこの奇跡のような蓄積も中国が支配する香港の現状を思えば風前の灯と言うしかなく、ただただ彼らが作りたい映画を今後も作れるように祈るばかりだ。
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