[コメント] メタモルフォーゼの縁側(2022/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ちょっと「ん?」と思うところもあるんですが、意外にいい画面や演出があるんです。
映画終盤で、スクールカースト上位の勝ち組女子のクラスメイトに芦田愛菜ちゃんが「がんばって」と声をかけるシーンがあります。このクラスメイトの美少女、高身長で芦田愛菜とはかなり身長差がある。そこでこのシーンは、彼女が階段を降りかける際に声をかけて、同じ目線の高さに揃えるんですね。大女優・芦田愛菜の目線が上だと文字通り「上から目線」の物言いになりかねませんし、逆に下からだと卑屈な印象にもなりかねません。こういう細かい点が意外とちゃんとしている。別の場所での同時進行をカットバックで見せるという手法を多用しているのがちょっと気になるけど。
芦田愛菜ちゃんが走るシーン(スローモーション)が印象的です。象徴的な場面は3ヶ所。最初の走るシーンは、幼なじみ&彼女とバッタリ会って「逃げる」。次は学校終わりに宮本信子の家に「喜んで向かう」。最後は幼なじみの手を取り、「彼のために」走る。
逃避 → 自己満足 → 他者利益 へという変化(メタモルフォーゼ)です。
つまりこれは、自己の承認欲求の渇望から充足へ、そして自己から他者の利益へと考え方が変わっていく物語なのです。
その一つが、芦田愛菜ちゃんが「ズルい」と羨望の眼差しを向けた勝ち組女子に対し、同じ目の高さで「がんばって」と言えるようになる心境の変化です。宮本信子にも同じことが言えます。自分用の食事はカボチャが切れずに包丁をぶっ刺したまま放置しますが、カレーやサンドイッチは「他者」へ提供するためにいそいそと作るのです。
正直言うと、「どうせいい話なんだろ?」と食指が動かず無視していた映画だったのですが、公開から半年近く経って岡田惠和脚本だと知り、知った時にちょうど近所の映画館で上映していたので足を運びました。そしたら、岡田惠和らしい「悪人のいない」予想以上にいい話だったというわけです。嫌いじゃないよ。
(2022.11.27 Morc阿佐ヶ谷にて鑑賞)
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