[コメント] PLAN 75(2022/日=仏=フィリピン=カタール)
さて、冒頭近く、「PLAN75」申請窓口の職員−磯村勇斗が、最初に来訪者とやりとりをする場面。一人一人、横からのカットを繋ぎ、切り返さない。これを見た際に既に予想したが、全編ほとんど切り返しを行わない映画だ。切り返しはゼロではないが、「PLAN75」施設で働くことになる女性マリア−ステファニー・アリアンが、二人乗り用自転車をもらう場面と、磯村と叔父さん−たかお鷹との応対シーン、及び、夜の道で手を振る部分ぐらいしかないように思った(もう少しあったかも知れませんが)。
その代わりと云っては何だが、本作には、ちょっと忘れられないような、強烈なカメラ目線ショットが2回ある。一つ目は、ホテルの清掃員−倍賞千恵子の登場シーン。もう一つが、コールセンター職員−河合優実の最後のショットだ。いずれも無言かつ虚ろな表情でカメラを(我々を)見る。観客は、何かを突きつけられたような気がするが、こういうメタな演出は、好き嫌いがあるだろう(実は私は好きではない)。ただし、コールセンターでオペレーションする河合を、ちょっと引いて撮ったショットは絶品でした。
あと、倍賞がテーブルに顔を横に向けて伏すショットと、その見た目で玄関口のすだれが繋がれる部分があるが、これは、職場の同僚だった大方斐紗子の顛末を見せるショットに呼応し、さらに終盤の施設でも、倍賞がベッドで顔を横にし、隙間から隣のベッドを見る、という演出に呼応しているだろう。こういった考え抜かれた相似の所作や運動の反復は、この監督の才能が意識させられるところだ。
ワタクシ的には、カラオケで、倍賞が「リンゴの木の下で」を唱う場面が出て来たのは嬉しかった。これは間違いなくワザと平板に(素人っぽく)唄っているのだと思う(上手すぎると違和感ありますから)。この歌が、もう一度繰り返される、というのはウソっぽいが、これも映画らしい良い反復だと思う。
#倍賞が真面目に「リンゴの木の下で」を唄った音源を、エンドロールで流したら面白かったろうのに、と妄想した。『博士の異常な愛情』みたいな面白さが出たと思うのだ(「明日また会いましょう」という歌詞の部分が、「We'll Meet Again」を想起させる)。でも、ちょっと趣味の違う映画になってしまいますね。
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