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[コメント] マイ・ブロークン・マリコ(2022/日)

タナダユキのハードボイルド。タナダユキはいいヤツだ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







過去作品を観ても、タナダユキの描く女性たちは強い自我を持っているんですね。たぶん、それはタナダユキがそういう人だからなんだと思うんです。しかしそれは、絶対的な強さではなく、脆く危うい強さです。この映画の永野芽郁も同様です。彼女は強がっているけれど非常に脆い。むしろその脆さを隠すために、強がって周囲と距離を置いているようにさえ見えます。そして、外敵と戦うのではなく(包丁と骨壺は振り回しますが)、自我を巡って自分自身と向き合うのです。

これはハードボイルドです。奪った骨壺抱えて裸足で川を渡るのがハードボイルドでなかったら何だと言うのでしょう?

その岬に行ったところで、何かが変わるわけでも何かが起きるわけでもない。そんなこと最初から分かってる。誰に頼まれたわけでもなければ、義理や義務や、ましてや安い正義感でもない。ただ「マリコと一緒にそこに行く」という、わけのわからない情熱とプライドだけが彼女を突き動かす。これをハードボイルドと呼ばずに何と呼ぶ!そんな永野芽郁が「いいヤツ」じゃなかったら何だというんだ!思い出しただけでも俺は泣きそうだ。

一方、マリコもまた、タナダユキ自身が投影されているように思います。マリコは極端ではありますが、タナダユキ作品の女性たちは、どこか「自分を殺して社会と折り合いをつけている」感じがあります。皆、大なり小なり「生き辛さ」を抱えている。おそらく、タナダユキ自身もそうなのでしょう。そうでなかったら、他人の生き辛さに寄り添えない。このマリコの描写は、煽情的なバイオレンスよりも、生き辛さに寄り添う視点のように思えます。やっぱりタナダユキはいいヤツなんですよ。細かい所に無頓着なのは否定しませんがね。

しかし、『僕の好きな女の子』奈緒ちゃんは、こんな役が多いんだよな。『君は永遠にそいつらより若い』とか。

(2022.10.02 TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞)

(評価:★4)

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