[コメント] 秘密の森の、その向こう(2021/仏)
欧州の民にとって"森"が秘める風土的神秘性のなせる技か。セリーヌ・シアマは何のエクスキューズもなく時空の壁を消滅させる。ふたりの少女の出会いと戯れが〈私のママはお祖母ちゃんの娘〉という切れない"糸”を紡ぎだす幸福な時間があってこその別れの結実。
ふたりの少女(ジョゼフィーヌ・サンス/ガブリエル・サンス)が画面を占拠したとき得も言われぬ幸福感に満たされる。特にふたりが"乱暴な調理”に熱中するシーン。演出ではない生の少女の表情や仕草は形容しがたい輝きに満ちている。セリーヌ・シアマの演出を放棄した演出として、ちょっと狡い、ぐらい素晴らしい。
余談です。私の娘にはまだ学齢に達しない娘がいます。妻と娘とその娘が作り出す屈託のない"輪”を前にして私は心地よい疎外感を抱くことがあります。三人の必然としての連なりを見ていると、この世は「女系」によって成り立っているのだとつくづく感じます。みんな見て見ぬふりを決め込む、男系男子を強いられる一族が担う制度の行き着く先が"必然"として断絶なのは明らかです。村上龍のエッセイ集のタイトル「すべての男は消耗品である」の聡明さに今更ながら思い至るのです。話がずいぶんそれてしまいました。
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