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[コメント] 宝石泥棒(1962/日)

山本富士子野添ひとみ川口浩船越英二の二組が、箱根のレイクサイドホテルを舞台にして、角梨枝子の持つダイヤ「ヴィーナスの涙」をターゲットに対決するお話。
ゑぎ

 この5人に加え、自称推理小説作家、菅原謙二の6人が主要キャストだ。実は、二組のコンビはいずれも泥棒だが、冒頭時点では、お互いに財閥系富豪の令息令嬢だと思っている、というのがポイントで、さらに、菅原が何故か開錠ツールのようなものを持っていることで、菅原のことを同業者だと疑うのだ(我々観客もそう思わせられる)。

 冒頭から角は川口に惚れており、ほどなくして、惚れっぽい山本も川口のことが好きになる。山本と川口がいい雰囲気になるのが早い展開なのはいい。また、モーターボートで遊びましょう、ということで、川口と角、菅原と山本の二艘で行くはずが、角と菅原は湖に落ち、川口と山本が一艘で出発することになる、このシーンも上手い。ラブコメとしても悪くない出来なのだ。湖に落ちた菅原が、2回水を口から吹く。このあたりから、菅原はコメディパートだと分かって来る。後のシーンで、菅原が酔っ払って変な歩き方をする演技も面白い。あと、野添も船越も適度に目立つ役割りが与えられており、主要キャスト6人とも、ほゞ均等に目立つようにさばかれているのも本作の良い点だろう。船越がいつもオペラの一節(「リゴレット」の「女心の歌」など)を唄っているのが彼らしくていい。

 ダイヤの争奪に関しては、二組とも偽物とのすり替え作戦で、角の部屋に簡単に入れてしまう(ホテルの鍵管理が甘い)のはご愛嬌だが、二転三転する状況を上手く構成していると思った。スクリプト段階でよく練られたプロットだと推測する。それに、6階(?)の外壁側の窓の張り出しを、ハイヒールで伝う山本のシーンなど、視覚的にもなかなか上手く見せているのだ。このサスペンス演出が有ると無しでは、本作の満足度はかなり違うと思う。

 クライマックスはホテル主催のパーティで、川口と角、山本と菅原がダンス中に、フロアが真っ暗闇になり、角の悲鳴が上がってダイヤが無くなる場面の顛末だが、こゝで、すぐに菅原が生バンドのステージ(かなり高い)に飛び上がり、誰も外に出ないよう指示するのがカッコいい。コメディ演技と落差もあり、余計にそう思う。そして、エンディングのダイヤ争奪戦の収束に関しても、恋の行方の帰結についても、最後までよく考えられたプロット構成だと感じる。細かい点ではご都合主義も横溢するし、平板な描写もあるけれど、全体としてよくまとまった、水準以上の作品だと思う。

#備忘でその他の配役等を記述すると、冒頭の山本と野添が入る宝石店の支配人は春本富士夫。ホテルの支配人は村上不二夫で、キールームのボーイは三角八郎。パーティでダイヤが無くなった後、呼ばれて来た刑事は潮万太郎

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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