大きな嘘(非日常的な虚構)を成立させるには、小さなリアルの積み重ねが必要だという原則が破綻している。

まず"その穴"の深さや明暗といった状況の描写がずさんで絶望感が伝わってこない。痛みや臭いや寒さといった落下男が感じているはずの体感の過酷さも伝わってこないので苦痛も共有できない。脱出のために男がとる行動は中途半端で説得力がなく納得できないので同情心も生まれない。当然、ハラハラドキドキのサスペンスは皆無。脚本が破綻しているので熊切和嘉も演出のしようがなかったのかもしれない。終盤の展開も「？？？」で観終わっても男が穴に落ちた顛末の辻褄が理解きないのですが・・・

同じジャニーズ系映画でも先日観た藤ヶ谷太輔さんの『そして僕は途方に暮れる』はとても好くできていたのに。中島裕翔さん、ちょっと損しちゃいましたね。

ところで、あんな過酷な状況でも、いまどきのスマホは壊れないのでしょうか。昔、知り合いの携帯電話の製品開発担当者が、ライバル研究のために軍事仕様の通信機器を作っていたモトローラー社の携帯電話を分解しようとしたが、どうしても外装を壊せなかったと言っていたのを思い出しました。余談ですが・・・