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[コメント] 別れる決心(2022/韓国)

パク・チャヌクと別れる決心…。別れぬ理由(<それは渡辺淳一)
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







話も見せ方もゴチャゴチャしてんなー、というのが正直な感想。

松本清張『張込み』のように始まって、「江戸川乱歩の美女シリーズ」(天知茂が明智小五郎のやつね)みたいな展開は、やりたいことは分かるんですけどね。ハッキリキッパリ言って、殺人手法に無理があり過ぎません?なに?そのロッククライミングのくだり?『妻は告白する』かよ。いや、若尾文子はあんな体力勝負なことはしてないけど。なに?その海岸のくだり?『砂の女』かよ。いや、岸田今日子はそんな無意味なことしてないけど。いずれにせよ、そんなことする必然性がどこにある?

「刑事は事件が解決するまで写真を貼っている」という伏線があるわけだから、女はひっそり消えるんじゃなくて「殺人事件を装って自殺する」=「男は女を一生追い続ける(忘れない)」っていう方が面白かったと思うんです。その方が、登場人物の感情として自然じゃないかな?

パク・チャヌクの「ケレン味」が好きではあるんですが、前作『お嬢さん』辺りから無理矢理感が強すぎる気がします。作り手が面白いと思うことが優先されすぎて、登場人物の感情が不自然に思える。加えてここ数作はその凝り過ぎがゴチャゴチャしていて、観ていて気持ちが乗らない。気持ちが乗らないから「どうでもいいや」って思っちゃう。

こんな状態が続くならパク・チャヌクと『別れる決心』をするべきなのかと思い始めています。でも、ハッとするような巧いシーンもあって嫌いにはなれないんだよなぁ。それが『別れぬ理由』(<それは渡辺淳一)。

余談

復讐三部作(『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』)の次は「人間ではない存在の三部作」(『サイボーグでも大丈夫』『渇き』『イノセント・ガーデン』)だったんですって。『お嬢さん』と本作は何三部作のつもりなんだろう?私は「言語が不自由な三部作」なんじゃないかと予想してます。ハリウッドで撮った『イノセント・ガーデン』の際に、言語の不自由さに興味を持ったんじゃないでしょうかね?ま、勝手な推測ですけど。

余談2

その『イノセント・ガーデン』はヒッチコック『疑惑の影』の新解釈だったと私は思っているんですが、ヒッチコック作品の新解釈(オマージュ)だと私が熱く語る作品がもう一つあって、アン・リー『ラスト、コーション』がそうなんです。あれは『汚名』だ。 それで、その『ラスト、コーション』がデビュー作で準主役を務めたのが、タン・ウェイなんですよ。ここで再会するとは思わなんだ。そして今更気付いたんですが、本作は『めまい』の新解釈じゃないか?

(2023.02.19 TOHOシネマズ日本橋にて鑑賞)

(評価:★3)

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