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[コメント] 逆転のトライアングル(2022/スウェーデン)

平等という建前は"取り引き"という格差隠ぺいシステムのもとで保たれ、互いに相手より優位に立ちたいという本音を満たす。そんなエゴイズムに支配された資本主義社会の危うさと醜悪さをリューベン・オストルンドは皮肉たっぷりにスクリーンにぶちまける。
ぽんしゅう

イントロでは商業主義の不誠実さの象徴として"人形化"されるファッションモデルたちが登場する。そして第一章のレストランの支払いをめぐるカップルの争いは、収入格差による「平等(建前)」と「優越(本音)」という人間が抱え込んだエゴイズムの矛盾をさらけ出す。第二章で、そんな人間たちが作り出す空疎な支配者層と、その富に群がる中間搾取者たち、それを底辺で支える下層労働者のシステムが文字通り反吐にまみれて崩壊する。醜悪な支配体制が消滅した第三章で描かれるは、オルタナティブなエゴイズムによって新たな支配体制が確立される顛末だ。

沸点に達した資本主義社会は新たなエゴイズムの登場をきっかけに変革される(かもしれない)。やがてそのエゴイズムを共有する者たちのルールによって新たな支配体制が出来上がる。そしてそのシステムも沸点に達し・・・変革される(かもしれない)。確かに歴史とはその繰り返し、なのかもしれない。そんことを考えた。

余談です。クルーズ船で裏方の下働きに従事する東南アジア人の一群が出てきます。新型コロナ騒動の初期に横浜港沖で止められたクルーズ船でも、劣悪な労働環境のもとフィリピン人労働者たちに感染クラスターが発生し犠牲者が出ていたことを思い出しました。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)jollyjoker[*] 袋のうさぎ

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